サンドウィッチマンライブ
2007
新宿与太郎哀歌

3月5日(水)DVD発売!
本体価格:3990円(税込)
販売元/CCRE株式会社
M-1グランプリ2007
完全版
敗者復活から頂上へ
〜波乱の完全記録〜

3月19日(水)DVD発売!
本体価格:6090円(税込)
(2枚組)
販売元/RandC
『霊的な話』
夏だしこんな話はどうだろうか?
母の知り合いに霊が見えたり話をしたりできる、いわゆる『霊能者』の方がいる。わかりやすく霊能者と言ったが、個人個人の能力で出来ること、出来ないこと、それによる位の様なモノがあるらしく、本来は一口に「霊能者」では片づけられないようだ。この人は公に商売としてやってるわけではなく、紹介程度の範囲で見ているらしい。もちろんお金も払うが来てもらったりしたら交通費は当たり前だが、決まった額があるわけではなく、その人の気持ちでいいという。元々霊がいない方がおかしいだろうと考えている私も会う機会があり疑問をぶつけたり、アドバイスをもらったりした。いくつかその『不思議な世界』の話をしてみよう。勿論どう解釈するかは人それぞれだ。
まず『輪廻転生』。これはやはりあるらしく、前世が人間なら人間にしかならないそうだ。
『前世で犯罪者だと生まれ変わった時に障害を持ったりや奇形で生まれる』という話を聞いたことがあるが本当なのか?と聞いたところ、全部が全部そうではないが、そういこともある、とのこと。
そして『幽体離脱』。子供の頃に夜中、幽体離脱し、学校に友達が集まってきて遊び、次の日学校で「昨日夜遊んだよね?」と聞くと覚えてる子とそうでない子がいたという。そして記憶で言うと、生まれてきた子供にお腹の中での記憶や前世の記憶を尋ねると話す子もいるという。そのうち忘れてしまったりするが、子供にそれを「聞かないから答えないだけ」とその人は言う。なるほど、確かに親が子供にそんな質問は普通しないだろう。ぜひこれから子供を産む親や喋り始めた子供を持つ親がいたら聞いてみてほしい。
『死んだらどうなるのか』。しばらくフワフワして好きなとこへ行ったり出来るらしい。好きな人や世話になった人なんかに会いに行ったりするもんなんだろうが、そういう一定の期間があるそうで、その後あっちの世界に行くらしい。たぶんイメージだと映画「ゴースト」のサムがしばらくこの世にいてから召されるシーンの感じではないだろうか?でもこの時楽しくてあっちの世界に行かないと浮遊霊としてこの世を彷徨うことになるとか。
『龍、白虎』。その土地やパワーのある人間についている「守り神的存在」。先日もライブドアの堀江社長に龍がついてるというのをテレビで見たが、なるほどわかる気がする。龍は実際スカジャンの絵などで見るような物より可愛らしいそうで手のひらサイズのようだ。パワーのない人に入ると龍自体のパワーも落ちるのでパワーのある人のとこへ行くらしい。ちなみにその娘さんも霊能者で、ついてる龍に「汝、修行が足りん!」と怒られたりするそうだ…。
『猿から人間へ』。進化の過程として授業で習うことだが、どうも私はこの理論が腑に落ちなくてそれが正解なのか聞いた。「そのうちわかるけどハズレです。だって猿は猿で今もいるでしょ?」だそうだ。
『宇宙人はいるか?』。ちょこちょこ来てて一部の人間とはコンタクトを取ってるそうです。
『普通の人でも修行などで霊が見えるようになるか?』一時的に五感の一つを消せばできるそうです…。
『念』気持ちや念は飛ぶそうで、「想い」は生き霊となって伝わるそうです。つまり、「ワラ人形」や「呪い」ってのはあるってことだが、それは自分にも返ってくるとか。それから人が作った物や中古品には気持ちが入るからよくないとか。引っ越し先にある前の住人の物とかは捨てなさい、と。あと動物の皮も弱肉強食で死ぬなら仕方ないが捕らえられてベルトや財布になるのは不本意で念が残るそう。
まぁ他にも色々あるがこの位にしとこう。そして最近巷で騒がれている地震。 猛暑の年は大地震に要注意と言われているので今年こそ危ないのではないだろうか。詳しくは説明できないが、『鉄板』を両手で持ち、真ん中を中心にグネグネと曲げているとその折れた真ん中のラインを触ると熱いはずだ。摩擦で熱が発生するのだ。この原理が地中で起こっていて熱が発生する為に猛暑になるという。つまり猛暑=大地震の危険大というわけだそうだ。この前も震度5強の地震で東京の交通手段のメインである電車はストップし、完全にマヒした。そして私の故郷仙台でも。間違いなく起こるであろう大地震。
その時自分はどこにいるのか?
守るべき人はどこにいるのか?
対策はできているのか?
頭にタライは落ちてくるのか?
大地震はいつ来るのか全くわからない。しないよりいいが、防災グッズを普段用意していても外出先なら意味がないかもしれない。その恐怖。
最後にその霊能者の人が見たという光景を伝えておこう。
今まで人間が行ってきた環境破壊で自然が怒っている。近年の異常気象なんかは始まりにすぎず、これからもっと色々なことが起こる。今年か来年か、年はわからないけど服装からするとたぶん9月ぐらい。
場所は静岡あたりで大地震があり、三回大きな津波が来る。
一瞬停電のように灯りが消えたと思うとグラッと来る。東京にも多少影響はあるから何日か過ごせる水と食料ぐらいは用意しておくようにしときなさいネ。
とのこと。もちろん今まで聞いたこと全てが本当なのかはこの目で見ないと分からない。しかし、もしこの地震が本当に起きて津波が三回来たなら、『そんなもん嘘に決まってんだろ!』と、あなたは言って笑うだろうか…?
『神宮開幕!』
四月五日快晴。
今日はヤクルトスワローズ対中日ドランゴンズの神宮開幕戦。当然私は神宮球場にいる。今年は声をかけたら軽く十人以上が集まり、にぎやかな試合観戦となる。私はなごみ堂の竹田さんと東京コミックショーの富永をひきつれ、集合時間より三十分早く神宮にむかった。
そう、池山のユニフォームを買えなかった時の二の舞を踏まず、去年買えなかった古田のホームユニホームを買う為に…!!
今年で引退のニオイがする背番号27のユニホームに袖を通してテンションが上がる私にうながされ中日ファンの二人がショップに行くと富永のテンションがあがり中日ユニホームが置いてないのでユニホームTシャツを購入!さらにテンションが上がる。それを見た竹田さんのテンションが上がり『トミー、金を貸してくれ!!』と言い放ち、同じくユニT購入!!お互いに似合う、似合わない、カッコいい、今日コレ着て寝ようぜ!と既に三人だけ舞台上のテンションだ!
よくサッカーの試合でグッズを身にまとい盛り上がってるサポーター達との温度差をテレビを通して感じる事が多々あるが、いざ自分が好きなチームのグッズを身にまとい、好きなチームを応援するとなるとやはりああなるものだと実感した。彼らは純粋に『好き』なのだ。ただそれだけなのだ。そしてここにいる三人もしかり。中日の格好をした二人にはさまれ、ヤクルトの格好をした私の三人で待っていると次々に待ち合わた皆がやってくる。伊達、ホロッコ夫妻、WANTED大平、修羅鬼、なごみ林さん、ななひかり。
中日Tウッズのツーランホームランで幕を開けた神宮だが、席につくと興味のある、なしの明暗がすぐにわかれた。
食事にしか興味をしめさず、すぐいなくなる伊達林チーム。
しきりにファミスタをひきあいに出し、マスコットキャラのつば九郎の動向ばかり気にする巨人ファンのななひかり氏。
G党をやめ、じっくりと試合を見入る百太郎氏とよりそって眠るコマリちゃん。ん、寝てる?!
楽しんではいるが応援がずれ、見てればわかる試合状況の確認をもとめてくる修羅鬼。
リアクション真っ二つのヤクルトファンの富澤、大平と中日ファンの富永、竹田氏。
そういえば神宮見にきた時はあまりヤクルトが勝たないという悪魔のジンクスがある。そのジンクス通り試合はヤクルトが負けた…。出待ちをしていると車から古田、五十嵐、ラミレスらが愛想よく手を振ってくれた。実に好印象だった。
私も愛想はよくしようと実感させられた野球観戦だった…。
『神宮開幕第二戦!』
四月六日快晴。
今日はヤクルト対中日の神宮第二戦。当然私は神宮球場にいる。
昨日とはうってかわり、中学のシニアでは神宮で試合をしたこともあるヤクルトファンのモミロックと去年無理やり宮本のユニホームを買わせヤクルトファンにした女のコとの三人での観戦。
今日はヤ党の人間だけなのでじっくりと観戦ができるはずだ。試合は初回、成長著しい二年目青木、岩村の連続ホームランでヤクルト先制で幕開け!復活した藤井も一回につき二人づつ三振を奪うペースで三振ショーを見せる!実にいい。ヘタしたら奪三振記録をぬりかえる勢いだ。
合間に流れるラッパーのジブラプロデュースの映像と曲もノリノリで試合を盛り上げる。心配なのは2000本安打まであと16本とせまった古田に今シーズンまだヒットが出ていないことだ。チャンスにまわってきても何か打てる雰囲気というのかオーラが見れない。いい当たりをするもファインプレーに阻まれる。もめにもめたプロ野球界に選手会長として野球以外のところで奮闘した疲れの影響が今頃出ているのかもしれない。
「あー、今の惜しかったなぁ古田…今取った中日の選手誰だよ?」ん?隣にいるモミロックの返事がない。聞こえてないのかとモミロックを見るとあってはならない事が起こっていた。
ヤクルトファンのはずのモミが瞳を閉じて口を開け、、こっくりこっくり、とこうべをたれているのだ!!私は伝家の宝刀である右の高速コークスクリューを振り抜いた。にぶい音は応援にかき消された。

「テメー今寝てたろ!?」
「い、いえ、考えごとしてましたっ!」
「何についてだ?!」
「え、あ、あの青木って選手についてです!」
「瞳を閉じてあいつを想ってたか?それだけでいいってか?平井堅かお前は!!」

こともあろうか昨日のホロッコこまりちゃんに続き、ヤ党のはずのモミロックまでも平井堅と化していた。目の前ではプロの選手達が野球をしているのだ。幼い子供達の夢が今まさに繰り広げられているのだ。所詮薄汚れた大人にとっては夢など寝ている時に見る物にしかすぎないのか…?
そんな疑問を持ちつつも「ロケットボーイズ」石井、五十嵐の必勝リレーで九回表ツーアウトまでこぎつけた。好調藤井を降ろしてまでもの必勝リレー、若松監督は勝ちに来ている!良かった、今日は勝てる。しかしそこから四球、ヒット、代打3ランホームランで同点…延長で押し出し逆転…最後は古田がまた打てず…。

「私が見に来ると勝てない」またも悪魔のジンクスはしっかり生きていた…。
『神宮開幕第三戦』
四月七日快晴。
今日はヤクルト対中日の神宮第三戦。当然私は神宮球場にいるに決まっている。
昨日は九回ツーアウトからストッパー五十嵐が試合をぶち壊し逆転負けしてしまい、私が見に行くとヤクルトは勝てないという「悪魔のジンクス」を忠実に体現した。本来ならもう行かないところが三度目の正直という言葉がある。信じてみようと神宮に足をむけた。
早めに神宮に着くと、マスコットのツバ九郎とツバミの間に生まれた子供的新マスコット(名前は募集中らしい)が正面入口で手を振りながら私を出迎えた。電光石火でそいつを殴り倒し中に入るとヤクルトの選手が練習を始めるところだった。
ちょうど「ラミちゃんペ!アイ〜ン、ゲッツ!」とパクリ芸人のラミレスが目の前に来たので「ラミレスーがんばれー!」と手を出すと軽くタッチしてくれた。すると隣に外国人男性と英語ペラペラ日本人女性のカップルが現れラミレスに話しかけた。
半分くらい理解できたが、男はルーマニア人で軽くホームシックだとか、もう帰るから最初で最後の試合観戦なんだとか言っていた。するとラミレスはそいつに記念にボールをやるよとフェンスの上から投げ入れたが、そんなやりとりを知らないガキ共が肉に群がるピラニアの様に一気に群がりボールを奪っていった。
「早くとらなきゃダメだ。じゃあ代わりにコレを」とラミレスは試合で使う赤い手袋をフェンスの間から差し出しプレゼントした。なんてカッコいいナイスガイだラミレス!だが選手名鑑でタメだと知って少しひいた。
席につこうとすると私の席におっさんが座っていたので蹴り飛ばした上で違う席に座ると試合が始まった。隣では腹減ったと泣き叫ぶガキがグランドに背を向けて食事やお菓子を食い続けている…。ラミレスにホームラン、ここまでノーヒットの古田にも連続ヒットが飛び出し試合はリードのまま終盤へ。ガキはポップコーンを頬張り、相変わらずグランドには目もくれずにさっきより太っている。ふと気づくと前方の席にはユーザロックがいたりしている。
ピッチャーは昨夜と同じロケットボーイズの必勝リレー、石井から五十嵐へ。昨夜と同じ…。昨夜はその守護神五十嵐が打たれた。果たして今日はだいじょぶなのか!?ワンアウトを取ると連続ヒットを浴び、昨夜代打同点ホームランを放った森野を全く同じ様なシチュエーションでぶつけてくるヤラシイ落合監督。三度目の正直と二度あることは三度ある、ということわざとは背中合わせだ。ここで再び打たれれば亮太にもヤクルトにもかなりキツイことになる。がんばれ亮太!!
「ゲームセット!」
五十嵐は、ヤクルトは勝った。三度目の正直は訪れたのだ!歓喜の中あのガキはようやくグランドに視線は向けたものの、マスコットのツバ九郎を完全に「食べ物」を見る目で見ている。そしてまた少し太っている…。
私はやっぱり野球が、そして我がヤクルトスワローズが大好きだ。そしてもう一つはガキが大嫌いだということが再認識できた充実の三日間だった…。
『戦いの歴史』
上京して七年。その年月は我々が住んでいるアパートの大家との戦いの歴史でもある。
この世界、テレビに出たり営業などが入らないと全く金にはならない。いくらライブが増えて忙しくなっても基本的にライブはノーギャラ。出ても交通費になるかならないか程度で、忙しくなればなるほど金が出て行き、売れるまでの繋ぎとして借金するしかないのが芸人の世界。もちろん家賃の滞納もせざるを得ない。しかも今住んでいるアパートは契約上、私一人で住んでることになっている。これがやっかいだ。問題が発生したりすれば対応するのはこの私。その日もそうだった…。
相方が家賃を用意できず、振り込みが少し遅れていたある日、チャイムがなった。夕方からバイトの為に寝ていた私を相方が血相を変えてお越しに来た。

「ヤバイ!大家だ!!おばちゃんだぞ!」
「あぁん?もー、お前何で出るんだよ…」
「だって新聞屋かと思って…」
「初めて会うんだからお前が富澤だって言やぁわかんねーだろうが」
「もう遊びに来た友達だって言っちまったよ…」
「ったく…」

いるはずのない「住人」が大家に対応するのは明らかにおかしい。起きた瞬間に私はどうやって話をそらすか脳をフル回転させた。

「あなたが富澤さん?初めまして。大家ですけど」
「あぁーどうもお世話になっております!」
「一人のわりにはずいぶん靴が多いのね?」
「あは!お気づきですか!靴大好きなんですよ!オシャレは足元から、って言いますしね!」
「…先月の家賃がまだ振り込まれないんですけど」
「はい、すいません!明日行こうと思ってて」
「ちゃんとしてもらわないと」
「はい、もちろんです!すいません!」

ここで私はあることを思い出した。隣の部屋に引っ越して来た人が最近、住んでる気配がないのだ。これは話をそらすチャンスだ!

「あ、隣の人ってちゃんと家賃払われてますか?」
「え?えぇ、今月のはまだ確認してないけど。なんで?」
「…あー、そうですか…なら、いいんですが…」
「何?何かあるの?!」
「いや別に…隣って一人暮らしですか?」
「うん、そうだけど…」
「そうか…一人か…まさかな…あ、すいません、なんでもないんです」
「ちょっと何、何かあるなら教えてよ!」

かかった!エサに食いついた!

「いや実はね大家さん、ここしばらく隣に人がいる気配がないんですよ。生活してたらわかる
 じゃないですか、音がしたりとかで。でもそれが急にしなくなった…もしかしたら死んで…」「ちょ、ちょっと変なこと言わないでよぉ!」
「でもね大家さん、現にこうして郵便物もたまってる。
 そういや最近変なニオイがするようなしないような…これもしかしたら死んで…」
「ちょ、もうそんな、や、やめてよぉ!」
「でもね大家さん、ここは東京ですよ?そういやこの前も近くで一人暮らしの男性が亡くなって
 しばらくたって大家が見つけたって事件ありましたよね?!こりゃあ完全に死んで…」
「ちょっと、こ、怖い事言わないでよ!あ、今いないかしら!
 ピンポーン!ピンポーン!(必死にチャイムを押す大家)」
「無駄ですよ!!(大家の腕をつかむ私)」
「ヒィィ…!」
「ヤツはこのドアの向こうで…そしてそれを最初に見つけるのは…アンタだ!!」
「もうやめてぇ!!」
「そしてそれを見たアンタもショックで死んで…」
「い、急いで家賃確認してみるわ!あ、ありがとね、じゃあ…」
「待って下さい!もし今鍵があるのなら私が先に入りますよ!そして私も死んで…」
「だ、大丈夫、今鍵ないし、すぐ確認するから!じゃあ…」

こうして私はなんとか説教をまぬがれた。何故かそれからすぐに隣は引っ越ししたようで、すぐまた違う住人が住み始めた。次に大家が来た時は『大家にしか相方は見えていない』という設定で話をそらすことに決定済みだ。早く売れてマンションに住みたいものだ…。
『破壊王富澤』その1
実は私にはあるジンクスがある。それは『私がバイトした店は必ずつぶれる(大規模なチェーン店をのぞく)』というものだ。
私が最初にバイトしたのは17歳の時のレストランの皿洗い。その店のウリは「フラミンゴを見ながら食事ができる!」という通 り、大きな店の中央には円柱形のガラスがあり、中には羽ばたくことのできない無数のフラミンゴが飼われていた。
苦痛だったのは、シェフが着るいわゆる白の上下に帽子を私も着用するのだがサイズがなく、毎回スボンのボタンをぶち壊していたことだ。履いた瞬間にボタンは飛び、皿を洗えばボタンは飛んだ。エビやカニの殻で手を切り、血まみれになりながら下半身をさらけだして皿を洗う私の場所からはボンボンと皿をおかれる小窓程度のスペースしかなく、フラミンゴを見たくてもマッチ棒の様な足しか見えない。向こうの客からは全身から血を吹き出しながら皿を洗う私の姿がかすかに見えていたのかもしれないが、鳥ごときに興味のない私は面接時に一度見ただけでそれからフラミンゴを見ていない。そんな獣くさいとこで食うメシはマズイのか、皿に私の血液がついていたのかは謎だが食事を残す客が多かった気がする。
元来人間とのコミニュケーションをとるのが下手な私はバイトにいく度に同期のバイトの奴が厨房のシェフ達と馴染んでいくの肌で感じ孤独を感じていた。そんな誰にも心を開かない私が唯一楽しみにしていたのはホールの連中が来る前にまかないを食い散らかすことだった。ラグビーの部活を終えてバイトに来る食べ盛りの寡黙な青年はまかないを食いつくし、いちもくさんに帰るのを唯一の楽しみとし、そしてそれが楽しくないことに気づきバイトをやめた…。
それからしばらくして南の空にフラミンゴが飛んで行くのを見た。【私の初めてのバイト先】はなくなっていた…。
『破壊王富澤』その2
私が次にバイトしたのは紹介で入ったピザ屋だった。
そこは紹介また紹介で入った先輩や同級生が多く、後に私の友達だらけの時期があったりするのだが楽しかった。そこで料理の楽しさも味わった。
高二、三年の一番大切な時期にダメ人間と化した私は10時に起床し「ハンターチャンス!」などと言いながら「100万円クイズハンター」を見る。そして「笑っていいとも!」が始まると皿洗いでかせいで買った原付きにまたがり家を出る。そしてピザ屋で昼食のスパゲッティを作ってから登校。小一時間ほど授業中に昼寝をしたら部活が始まり、終わったらピザ屋のバイト。よく卒業できたものだと我ながら関心する。おそらく危なげな教科の先生方に正月出した「今年は心を入れ換えてがんばって卒業します!」とヤル気満々の年賀状を出しておいたのが効いたのであろう。
そんなことより当時はデリバリーと言えばピザ屋ぐらいしかなく、仙台でピザと言えばストロ●リー●ーンズが独占状態だった。うちの様な弱小ピザ屋がかなうわけないのだが、信号待ちではメンチのきりあい、飛ばしあい、公道ではレース状態とデッドヒートを繰り広げていた。
そしてピザ屋と言えば何といってもクリスマスだ。この時期ピザ屋はサンタに変身する。サンタがピザを届けて金を受けとる。何とも夢のない話だが、子供達がこの光景を見てサンタに対する認識を謝ったらどうするんだ、とサンタに扮した完全にリーゼントパーマの私はそう感じていた。嫌な予感をさせながら団地に配達に行くと早速子供達が集まってきた。「あー!ニセサンタだ!!」良かった、この子達はサンタの見分けができている。そう思ったのもつかの間、子供はボンボンのついた赤い私の帽子を奪い取ると逃げ始めたのだ。
「コラァ!返せクソガキこの野郎!!」
私は子供達の輪の中でパス回しされる帽子を追ってはいずりまわった。地面に倒れた子供の群れを背にし、やっとの思いで配達を終えると次は女性のアパートへ配達だ。
「寒くて大変でしょう?今友達集まってクリスマスパーティーしてるからもし良ければ一緒にどうですか!?」
「え、いいんですか!?」
そんなやりとりをイメージしながら半笑いで配達に向かうが実際あるわけがない。受け取りに出た女性の背後からは「ほんとにサンタのカッコしてんの?」とあきらかにコタツで横になって問いかけてる彼氏的存在の声。「うんしてるよー」彼女的存在の声。私は目の前で丸聞こえで行われるカップルの会話のオカズだ。そしてピザがオカズになり、彼女がオカズになるという夜のXマスの生態形に組み込まれる私。実にクリスマスは不愉快だった。そして高校を出た私はそのままバイトを続け、店長代理にまでのしあがったが、そこに待っていたのは「責任」だけだった。富澤政権は長くは続かず、私はピザ屋を後にした。しばらくしてそこを通るとピザ屋はなくなっていた…。
『破壊王富澤』その3
私は駐車場にいた。車を持つようになり、どこへ行くにも「駐車料金」が発生するのがくだらなく感じた私は「じゃあ駐車場で働きゃタダじゃん」と考え駐車場でバイトを始めたのだ。
最初にやってたところをやめた知り合いの紹介で入ったそこはしばらくすると紹介また紹介でまたまた友達だらけになり楽しかった。富澤政権でテレビとゲームを導入し、日夜行われる野球、サッカーゲーム大会。お笑いを始めた私はネタを書いたりと、給料も現在の三倍もらい充実していた。しかし、その駐車場に異変が訪れた。頻繁に故障が起こるようになったのだ。
ある日、出てきた車の後部ガラスにローラーの様な部品がおっこち、ガラスが粉々になって出てきた。「お待たせしま…えぇーっ…!」そこから三十台の車を近くに移動し緊急工事なんてこともあった。長く続かないのが富澤政権の特徴。
やがて相方が会社をやめ、東京を目指すことになり私は駐車場を後にした。久々に帰郷すると駐車場はなくなっていた…。
『破壊王富澤』完結編
私は東京にいる。そして駐車場に。やはりやっていただけあり覚えやすく、長く続いた。仙台と違い高級車が多く、ヤクザの皆様方もいらっしゃるが大都会東京にも居場所ができたのだ。
なんとか生活にもリズムができて色んな人とも知り合った。仕事がら会社社長や芸能人も見たり話したりした。普段乗れないようなベンツやジャガーの高級外車からタクシー、防弾ガラスの車までをもを乗り回しぶつけ回す。しかし、不況のあおりや飲酒に対する道路交通法改正などによりお客も激減、長く勤めて時給が下がるという初めての事態に仲間が皆やめていく中、私は一人残りこの東京でも富澤政権を確立したのだ。
だが、同時に富澤政権が短命なのも私自身知っている。嫌な予感がしていた。ある日バイトに向かった私を待っていたのは「三月末日を持って営業終了」の知らせ。寝耳に水、いや寝耳にローション並みの衝撃だ。「はぁっ!?」皮肉にも嫌な予感ほどよく当たる。前兆無しの恋の終わりかの様にそれは訪れた。在籍中に潰れるバイト先は初めてだ。しかしここは東京、何でも起こりうるのだ。もちろんバイトなどしたくない。しかし今はせざるを得ない。また新たに何のバイトにつくか今はまだわからない。くしくも営業最後の日、ほんとの意味で店を閉めるバイトのシフトには私の名前が書き込まれていた。やがてこの道を通 り、私はまたつぶやかねばならないのだ。「なくなっていた…」と。
これを読んでいるあなたがた、他人事と安心するのはまだ早い。次に破壊王富澤が現れるのはあなたの職場かもしれないのだから…。
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